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【No.774号】 【発行日】2018/4/5 [8-1]
 つれ連れ草 -627- 光が丘夏の雲小学校副校長 本橋 教子
●冬の秩父

【 記事 】

 先日、一泊で秩父に行く機会がありました。
 行きのレッドアローが途中、一時停止。何かと思いきや、車窓から氷柱のブルーのライトアップを見ることができ、幻想的な雰囲気と粋な演出に感動しました。
 宿でおいしい魚に舌鼓を打ち、温泉に浸かった翌日、風の出ないうちにライン下りということで駅へ向かって歩いていると、リヤカーを引いたおじさんが声をかけてくださいました。
 「つららを見ないかね?」「2分くらいで行けるよ。」とのこと。ちょっぴり聞き取りにくかったおじさんの土地の言葉に、池袋から一時間弱の場所でありながら、いつもと違う場所に来た気分を味わうことができました。
 案内された、旅館の裏手から川に降りる土手には草が生え、それを伝って土から出た水分が見事なつららになっていました。普段の冬ではこの場所にはつららはできないそうです。日本中が寒い冬なんだと改めて実感しました。おじさんからは小鳥の寄ってきそうなかわいい音色の出るお手製の竹の笛も頂きました。
 いよいよライン下りへ。船のドックになっている場所は見事に氷が張っていて、船頭さんの竹の竿が水に入る時にバリバリと音を立てていました。幾重にも重なった氷の「塊り」に「冬ならではの景色。それにこんなに見事な氷は今年だからこそ!」とお得感いっぱいで船に乗り込みました。岸の雪景色やつららの壁、流れの急なところで逆巻く水面、長瀞名物の一枚岩を満喫しながら30分ほどのライン下りを楽しみました。
 後からタクシーの運転手さんに聞いたところ、冬場のライン下りは水の穏やかなところを一周するだけの船会社が多いそうです。私たちの乗った会社の船は船底を浅く切ってあり、水量の少ない冬場でも何とかライン下りができるということでした。そういえば、ごり、ごり、と船体が岩に当たる音に、何回か「ここで船が壊れたらどうしよう?」などと心の中で要らぬ心配をしていたのを思い出しました。『秩父=ライン下り』くらいの考えで当たり前のように川下りを楽しみましたが、全く当たり前のことではなく、そこで生活を営む人たちの様々な工夫や努力があったればこそと教えていただきました。
 歴史の中で、ご当地、秩父は時の政府にも物言わんとするくらいの剛毅な土地柄と記憶しています。忙しい日々の合間にすてきな時間をくださった秩父の優しい方々に感謝です。

 1965年鹿児島県生まれ 北区在住


光が丘新聞         2018/4/5

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