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【No.593号】 【発行日】2009/9/20 [8-1]

 つれづれ草 -448- 練馬高等学校校長 早山(そうやま) 義郎



●「信頼について」



【記事】
もう30年も前の話である。学生時代に荷物の運搬のアルバイトをしたことがあった。自分で車を運転し、荷物を積み、国道20号線(甲州街道)をアルバイト先である市ヶ谷方面に向けて走行中、前方左側に軽トラックが駐車していた。私が駐車している軽トラックの横を通り抜けようとした時、その軽トラックが突然バックをし、甲州街道沿いの自宅車庫に入れようとしたのである。そのとき、私の車の左前方から横に掛けて軽自動車がぶつかってしまった。車から降り、軽自動車の運転手とやり取りし警察に連絡。警察官立会いで現場検証をしている際、どうやら軽自動車の運転手が酒臭いということで測定したところ、早朝まで飲酒していて、まだ完全にアルコールが抜けていない状況であった。その運転手への罰則はどうなったか知らないが、破損したそれぞれの自動車の修理は、互いの保険を使うことになった。さて、意気消沈して仕事先に戻り、事故の報告をしたとき、担当の方からの「それは大変でしたね」という励ましの言葉を期待したところ、「相手に全額修理代を出させるべきだ。君は人が良すぎるよ。」と言われ、さらにショックを受けた。というより、担当者に対して若干の怒りを覚えた。その後、別の人から「人が悪いより、人が良いほうがいいですよ」と言われ、私の気持ちは救われたのである。そう言ってくれた人物は、私にとって「信頼できる人」であったことは間違いない。
 これまでの経験、人との関わりから得られたこと、感じたこと、私の両親の育て方や考え方、それらを通して失敗や挫折、成功や充実感などを繰り返しながら「自分」という人間性や考え方を確立し、生きているのだなと思う。「真面目な人は馬鹿を見ない」、「人は信頼すること」、「損得を考えて他人と関わらない」、「人を見下さない」など、今でも私の心の中で常に留めていることである。
 そういえば小さい頃、よく母親に言われていた言葉がある。「お前は人から騙されやすいから気をつけなさい」と。私は気をつけている一方で、「騙すより、騙される方が人間として良い」と考えたりもする。そして信頼することから始まる、教師という仕事は天職なのかもと思いつつ、結構生徒から騙されたなと振り返る。
                           
 昭和31年 東京都生まれ 狛江市在住

光が丘新聞         2009/9/20

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